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ある時期、太宰治の小説、エッセイを読みあさったことがある。

ちくま文庫から『太宰治全集全10巻』が出ているので、とりあえず全巻取りそろえてみた。

といって最初から読み通すのではなく、気に入ったものから読んでいくというスタイルだ。

途中で投げ出して次の作品に行ったり、また戻ってみたりと一貫性はないけれど、それでもほぼ読み終えたはずである。



で、もっとも記憶に残っている作品はなにか。

多くの人は『斜陽』とか『人間失格』を上げるかもしれない。

あるいは『晩年』『津軽』『走れメロス』か。



そうした代表作も、もちろん面白いのだが、記憶に残っているということでいえば、一番最初に上がるのが『畜犬談』という短編である。



大宰治自身は、『畜犬談』の筆を起こした時は、そのつもりではなかったらしいけれど、最上のユーモア小説に仕上がってしまったようである。

読みながら、何度も笑わせられた。



太宰治らしき「私」はたいへんな犬嫌いで、その嫌いの理由について冒頭から過剰な表現で犬の凶暴性について書く。

ここがまずおかしい。

犬が大嫌いなのに、まるで愛犬家のように犬の生態をよく知っているのである。

その矛盾について大宰は「犬に噛まれないようにするには、犬のことについてよく知らなければならないから観察は怠らない」という風に説明するのだ。



これ以上詳しくは書かない。

なにが言いたいかといえば、大宰治を「暗い」と評する人が多く見られるが、それは誤解であるということである。

暗さの底を知った人間しか出てこない独特のユーモアと、ネアカの人間とは異質の明るさが、太宰治の持ち味のような気がする。



それは『畜犬談』を一読すればよくわかる。

ついでに、『走れメロス』なんてのも、暗い人に書けるような作品ではない。





さらに、記憶に残っているところでいえば『お伽草子』である。

戦争中に検閲が厳しくなっていた時に書かれた作品で、この中の『カチカチ山』を大変面白く読んだ。

ウサギとタヌキの童話を大宰流に解釈し、女と男の関係に置き換えて話を進めていくのだ。



これも読みながらクククと笑いがせり上がってくるのだが、タヌキの最後のセリフでの、どんでん返しは、お見事である。

このセリフだけは、忘れられない。



「惚れたが悪いか」



大宰治は恋愛について「愛することは命がけだよ、甘いとは思わない」と言っているけれど、タヌキは、まさにその通りになった。



というように「大宰は暗い」と避けている方々、これらの作品を読むと次から次と大宰の世界を知りたくなってくるはずである。

秋の夜長、読書したいとお思いの方、ぜひ、どうぞ。
2008.10.18 / Top↑
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