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酒の飲み方は、人それぞれである。

酒のクセも長年かけてつちかったものだから、簡単に変わるものではない。

わたしの場合は「ながっちり」と言われている。

漢字では「長尻」と書く。

飲み始めると、長い。

ハタと気がつくと一緒に飲んでいた仲間たちは倒れるように昏睡していて、外

をながめると明るくなっている。

飲む相手がいないというのは寂しいもので、やむをえず寝ることにするが、2

時間ほど眠ると眼が覚める。

二日酔いではなく、完全なる酔いのままだからビールを口にしたくなる。

ビールがなければ酒でもかまわない。

そうなると延々飲みつづけることができる。



5年ほど前のことだが、東京へ出たとき、知人友人と会って毎夜飲みつづけた

ことがあった。

朝、太陽がすっかり上がり、街が動きはじめている頃まで飲み、ホテルにもぐ

り込んで数時間昏睡。

目が覚め、酔いが残っているまま書店をうろうろ、映画を観たりして、今日こ

そは佐渡に帰ろうと思うのだが、都会のネオンが煌めき始めると、ついなじみ

の酒場に足が向いてしまう。

それを繰り返しているうちに気がついたら1週間も経っていた。

佐渡に着いた時もまだ酒が残っていた。

それから3日もの間、体内のアルコールが完全に消えるまで寝たきりになって

いたことが思い出される。

これが「ながっちり」の自己最高記録である。



あまり信じてはもらえないのだが、基本的に家で独りでは飲まない。

飲むのは客人があったときだけだから1週間来客がなければ、1週間飲まない。

つまり、酒そのものが好きなわけではないようである。

人と飲む酒が好きなのだと、自己分析している。

だから飲んではしゃべり、しゃべっては飲むというスタイルでかなり饒舌にな

り、酒の相方たちにうんざりされているのではあるまいか…。

と、酒がようやく覚めた頃になって反省するのだが、酒が入ると反省したこと

さえ忘れてしまう。



一方、知人の中には毎日飲むタイプがいる。

むしろ、こちらの晩酌タイプの方が多いようだ。

その中のひとりが健康診断を受け、その結果を示されながら医師に言われた。

「飲酒は週に一度にして下さい」

問題点が発見されたらしい。

彼の場合、晩酌というのでもない。

深夜、独りで飲みながら創作活動を行う。

そういう時の酒は、想像、空想、妄想を際限なくひろげてくれる。

オレは天才ではないのか、と思うほどの閃きが下りてくるもので、つい量がい

ってしまう。

もっとも翌日、その閃きを確認すると、たいしたことがなかったりして愕然と

することの方が多い、ということは、わたしもずいぶん以前に、ずいぶん体験

しているので、手に取るようにわかるのである。

そうした酒を楽しんでいた彼が「週イチ」に制限されたら辛いものだろうなと

同情しつつ、様子伺いに行こうと思った。



「相撲中継終了後、おすそ分けのようなものですが、梨を持ってうかがいます」

と、メールを送信した。

するとどうだろう、畑で収穫した茄子などを用意して、玄関先で待っていてく

ださった。

そして、開口一番、ニヤリとしながら、こう言うのだ。

「飲みましょ」

「飲みましょって、ダメなんでしょ」

「だって生酒があるから、早く飲まないと劣化しちゃうし」

飲ん兵衛には心当たりがあると思うが、酒飲みというのはいろいろな言い訳、

大義名分を考えつくものである。

おそらく彼は生酒が刻々と劣化していく状況を思い描いてはいたたまれず、チ

ビチビやっているに違いないと想像した。

そこに奥さんも顔を出し、

「お酒の飲み方を教えてやって下さいよ」

と言うのだった。

教えるなんて、おこがましいことができるわけがないと思い、ていちょうにお

断りするけれども、誘われると断りきれない弱さを露呈、気がついたら日本間

に図々しく上がり込んでいた。



半分ほど空いている「真稜 純米 生」が座卓に置かれた。

「今後、ぼくには一切酒を注がないで下さいね。自分のペースでやりますから」

と彼が言った。

わたしは、思わず、笑った。

われわれの間では以前から互いに酌はせず、原則手酌でやる。

それが流儀として定着していた。

笑ったのは、彼の飲みっぷりに理由がある。

その特徴はスタート地点にあってドラックレースなみのスタートダッシュを見

せる。

ひと口めからフルスルットルでいき、最高速に達したあとは、その慣性のまま

ペースダウンしていくスタイル。

時々、ペースダウンに失敗してエンジン全開のまま走りつづけ、ある瞬間に急

激にスピードが落ち、クラッシュ。

「酔っぱらっちったぞぉ~」といったままコースアウト、爆睡に入るのである。

だから自分で注いでは最高速に達したり、クラッシュするのだから

「今後はぼくに注がないで」とはいかにも滑稽な宣言で、

「うふふふ」という笑いがせりあがってきたのだ。

それでも「今後一切注ぐな」とあらためて宣言したのは、やはり、検査結果の

数値が重くのしかかっているに違いないと思われた。



その相方をつとめるわたしの飲み方は、いわばソーラーカーのようにチビチビ

とエネルギーを補給しながら走りつづけるカメのような飲み方である。

だから、すかさず置いていかれてしまう。

それを避けるためには、質問攻めで接点を確保するしかない。

質問しては耳を傾け、そして意見を述べ、笑い、そうやって飲んでいると、時

間はアッという間に過ぎていく。

献杯後、彼は、すぐに酒屋の店主、奇楽庵に電話して、

「酒持ってきて」

と注文していたが、午後8時半過ぎに酒を2本持ってきた奇楽庵が参戦してい

たことは覚えている。

それから相撲の話やらブログの文章について語り合い、さらに音楽とは、夫婦

とは、という具合に話題がコロコロと転がっていった。

そして、気がついたら午前4時だった。

横を見ると彼も奇楽庵も、昏睡していた。

やはり、この日も、カメのような走りの「ながっちり」をやってしまったよう

だった。

そして、「酒の飲み方を教えてやって下さい」と大奥殿に頼まれていたことを

思い出し、頭を抱えるしかなかった…。
2006.09.20 / Top↑
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