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犬を連れて散歩をしていると、見知らぬ人から声をかけられることが多くなった。

「珍しい犬ですね。何という種類の犬ですか?」

わが家の犬はかなり珍しい種類のようで、声をかけてきた人は全員が、こう質問してきた。

「いや、わたしもわかりません。捨てられていた子犬を育てたら、こんな姿になりました」

「ほう」

「間違いなく雑種でしょうね」

「そうか、だとしたらテリアが混じっとるな」

おおよそ、こうした会話になる。

声をかけてくださる方は、みなさん、犬を飼っていて、しばしの犬談義。

昨日、稲刈り後の始末をしている手を休めて声をかけてくださった老翁は、猟犬のセッタ

ーを飼っていると説明してくれた。

「日本の猟犬と違って、獲物にまっすぐ向かっていかんな。時には背中を押さないと鳥を

追わない」

老翁はキジやヤマドリを猟銃で狙うのだそうだが、この数年でめっきり野鳥が減ったと、

しばし嘆いておられた。

「テンのしわざだ。テンが増えすぎた。畑はタヌキにやられるし、佐渡もダメだな。トキ

を放したって、テンがみんな食うわさ。あいつら木登りがうまいからな」

「昔は、野良犬がいたでしょう。野良犬は、ヤマドリやらキジをとっていたんですか」

「いや、野良犬は、鳥はとらんかったな。はぐれた幼鳥をとるぐらいだろうさ。野良犬や

野良猫がいなくなってから、タヌキが増えて畑を荒らし、テンがウサギを根こそぎ絶やし

たように、いまはキジやらヤマドリをとりつくすだろうな」

「野良犬ってのは人間を襲いましたか?」

「いや、そんなことはなかろう。犬同士で縄張り争いのケンカはあったろうけど、野良犬

が人間を襲うことはなかったな。むしろ、つながれっぱなしの飼い犬がストレスをためて

人間を襲うんだ」

「ということは、野良犬の効用というのはあったんですね」

「そういうんだ。野良犬や野良猫がいたからタヌキもテンも人里にはあまり出没せんかっ

た」

「いまはトキを保護するために、犬の放し飼いも条例で禁止され、違反したら罰金も科せ

られるそうですけど、農家にとってはどうなんでしょ?」

「トキを守って人間を殺すっていうやり方は、昔からおカミがやることだわさ」

生類憐みの令という話にも拡がっていった。



野良犬の話を持ち出したのは、じつは、朝日新聞で連載をはじめた農民作家、山下惣一さ

んのエッセイを読んだからだった。

『山下惣一の佐賀・唐津の田んぼから』と題された、その初回(9月26日付け)で、山下

さんは、家の前の畑のスイートコーンが、収穫目前にしてわずか三晩で全滅させられた、

と書いている。

犯人はタヌキか穴熊であろうという。

イノシシの害も大きく、対策なしでは何一つ収穫できない惨状を述べているのだ。

目を引いたのは、その原因である。

山下さんの言葉をそのまま引用する。

「なぜ、こんなことになったのか? 村に用心棒がいなくなったからだというのが、私の

観察である。すなわち、野良犬、野良猫だ。長い間、動物は山に、人は里に住み分けてき

た。両者で協定を結んでいたわけではなく、実は夜な夜な徘徊する野良犬や、闇のそここ

こで目を光らせている野良猫が住み分けの監視・見回りをやっていたのだ」

と書いて、「用心棒特区」で野良犬や野良猫を復活させ、保健所は立ち入り禁止、にした

いと求めるのである。



このエッセイを読んで「なるほど、そういうことか」と合点がいった。

佐渡も同じなのだろう。

10年ほど前に佐渡に越してきたとき、たしかに野良犬がいた。

冬場になると、放し飼いの犬も含めて徒党を組んでいたのを何度も目撃している。

その野良犬、野良猫が駆逐され、野生動物が人里を荒らしはじめたという構図なのだろう。

わたしが犬を連れて散歩していると、「珍しい犬だな。なんという種類だ?」と必ずとい

っていいほど質問されるのは、野良犬がいなくなったために雑種犬を見ることがなくなっ

たからだと、気がついた。

雑種犬が珍しい時代なのだ。

行きすぎた管理は、同じ顔をした純血種ばかりがはびこるクローン社会を思わせる。

お利口さんばかりのようで、どうも落ち着かない。
2005.09.29 / Top↑
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