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あれは本当にうまいのか?



と疑ってしまうような食べ物ってありますね。



たとえば、この季節でいえば“春の風物詩”ということでニュース番組ではお馴染の「しろうおの踊り食い」というもの。

佐渡あたりではあまり「踊り食い」はしないようですが…。





昔、20年ほど前でしょうか、新橋のある小粋な小料理屋の女将に、

「食べてみる?」

と言われたことがあります。



まだまだ意気がっていたころですから、

「ちょうだい」なんて、こちらも無理して言ったものの、出てきたものを見て、目が点になりました。



ビニール袋の中で泳いでいるのです。



「今朝、九州から着いたばかりですから、まだ生きているんですよ」



全身が透きとおっていて黒目や内蔵までが見える。

ちょっと前に流行ったスケルトンボディ、そのものです。



そして、一緒に飲んでいたのが悪いことに「しろうおの踊り食い」の本場、北九州出身のある小説家先生で、したり顔で、こういうのです。





「あなたね、これは最高級品ですよ。噛んではいけません。そのまま飲み込むのが粋な食べ方ってもんですよ」





噛む勇気もなければ、飲み込む勇気もなかったのですが、

「そうらしいですね」

と、こちらもしたり顔でこたえたものの酔いがスーッとさめていく感じでした。

じつは、こういうの、大の苦手なのです。



よく活き造りなんて刺身が出てきますよね。

鯵の活き造りを食べたことがあるのですが、ごていねいにも頭が添えてあって、よく見ていると口をパクパクさせていて、しかも、目はこちらを見て、まるでなにかを訴えかけているようなのです。



それを見た瞬間、失せました。

悪趣味だ、と思い、以後、活き造りといったものは一切注文もしなければ、活魚などという看板がある店は避けております。



そういうわたしが、その「しろうおの踊り食い」というものを食べるハメに陥ったのでした。



女将が「しろうお」をすくって小鉢に入れてくれました。



圧巻はポン酢醤油を入れた瞬間です。

魚だけに、まさに右往左往の大暴れです。

ピチピチ、ピチピチと勢いよくハネるのです。



目をつぶって一気に口に運んでみました。

噛みませんでした、というより怖くて噛めなかった、というのが真相で、そのままゴックンと飲み込んじゃいました。



動いてましたよ、喉越しに。

そして、胃袋に収まってもなおピチピチしているような気配があり、あわてて酒も飲み込みました。



「うまい、さすが活きがいい」



格好つけて言いましたが、味なんか、まったくわかりませんでした。



あれ、本当にうまいの?

と、じつはいまでも疑っております。



なにしろ、いつまでも胃袋の中に生き物を飼っているようで、こうなったら酒をしこたま飲むしかないと、新橋から新宿へ戻り、朝まで飲み続け、「しろうお」をアルコール漬けにしてやりました。

ええ、もちろん、メチャクチャな二日酔いで、えらいめにあいましたが…。







そして、今日です。

久しぶりに「スケルトン・しろうお」と対面しました。



日ごろから愛飲している「真稜」の醸造元の若社長が、前触れもなくやってきて、

「これ」とぶっきらぼうに渡してくれたのです。



ビニール袋を手に取って見ると、一目で「しろうお」とわかり、ギョっとしました(これまた魚だけに…)。





お吸い物にでも放して食べようか、それとも、卵とじにしちゃおうか、なんて考えたのですが…。



そのとき、20年前のことが、ふとよみがえってきたのでした。

飲み込むのではなく、噛んだらどんな味がするのだろうか、との好奇心がわいてきたのです。

なにしろ北九州出身の小説家の先生もいませんし、女将もいないのですからカッコつけることもありません。

カミカミして食べてやろうと、そう思ったのです。



「しろうお」は、すでに息絶えているようでしたので、そのまま酢醤油で一気に口に運び、カミカミ、カミカミ、カミカミ…。





踊り食い























うまッ。



プリプリとした食感で、噛めば噛むほど口の中全体に甘みが広がっていきます。

ちょっと驚き、もう一杯小鉢にすくって食べてみる。

やはり、うまい。



ためしに、息子にも「食ってみろ」と言ったら、一瞬、間がありましたから返事もきかずに、出してやりました。

すると、「あら、美味しい、甘いね、これ」と同じ感想。



いやはや、こんなにうまいものを、なぜ九州の人たちは、噛まずに、飲み込むんだろうと、不思議な気分になりましたよ。



おそらく「粋な食い方」ってことなのでしょうね。



蕎麦なんかでも、よく言われました。

いわゆる蕎麦通と称する方が、

「噛んじゃいけないよ。蕎麦はのど越しで味わうものだ」

と言って、かなり大げさにすする音をたてて食べていた姿がいまも思い出されますが、そんな食べ方で本当に美味しいのでしょうか。



わたしなんかは、要領がいい方なものですから、

「蕎麦は、やっぱりのど越しですよね」

と、相づちを打ちながらも、カミカミ、ゴックンしていました。



そういうわけで、わたしも粋を追求したいところですが、「しろうおの踊り食い」と「蕎麦」は、噛んだ方が絶対にうまいですよ、みなさん。



ついでに、「しろうおのかき揚げ」も作ってみました。



しろうおの天ぷら



これまた絶品でした。



緑は、大好物の春菊の天ぷらですが、なんと、この春菊天を初めて食べたチビ姫1号が、

「美味しい、美味しい」と、大絶賛。



味覚の隔世遺伝のようです。







春らんまん…。



ごちそうさまでした。


2009.03.31 / Top↑
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